
2025.09.11
住宅断熱リフォームが守る子供から高齢者の健康 第 5 回:快適性と健康効果を高める設備と内装
第 5 回は、「快適性と健康効果を高める設備と内装」について詳しくご紹介いたします。
高断熱住宅×全館空調の採用で温度ムラを抑える
同じ断熱性能の住宅でも、個別空調システムと全館空調システムの違いにより健康効果に差が生じること が、ハウスメーカーとの共同研究により明らかになりました。 個別空調システム:各部屋にエアコンが設置され独立して運転します。換気は第 3 種換気(排気ファン付・給気は自然吸気)を採用する一般的なシステムです。この場合、冬季には外の冷たい空気が家の隙間か ら自然に流入し、夏季には暑く湿った空気が侵入します。
全館空調システム:1 台の空調機で住宅全体の温度管理を行い、換気システムも統合的に設計されているシ ステムです。24 時間連続運転により、住宅内の温度ムラを最小限に抑えることができます。 室温測定結果を見ると、個別空調システムでは住宅の各部屋において 18 度を下回ってしまっています。一 方、全館空調システムにおいては、各部屋が 18 度以上に保たれ、WHO の推奨基準 18 度を余裕を持ってク リアできていました。
光熱費については、断熱等級 5 レベルでは全館空調の方がやや高額になる傾向がありますが、断熱等級 6 以 上であれば両者の差は僅少になると予測されます。住宅の高断熱化により、全館空調の運用コストを効率的 に抑制でき、健康リスクも削減することができるのです。
全館空調と個別空調による血圧への影響の違い
空調システムの違いによって、居住者の血圧にも違いが見られました。 朝の血圧において、全館空調システムの住宅居住者は個別空調システムの居住者と比較して 4mmHg 低い値 を示しました。また、入浴前の血圧測定でも 2mmHg の差が確認されています。
このように、設備システムの適切な選択により、循環器疾患のリスクを左右する血圧の改善効果が得られることを示したのです。
内装に木質素材を使うことで睡眠の質が改善される
木質内装材の効果についても研究が実施され、科学的根拠に基づいた健康効果が確認されています。 この研究では戸建て住宅において、内装まで木質素材を使うことで、睡眠の質が改善されるという結果が得 られました。
また、木質内装による睡眠の改善は、認知機能や作業効率の向上にも寄与することも分かっています。子どもの場合、学業成績向上により進学機会の拡大が期待でき、長期的には生涯年収にも影響する可能性も考えられるでしょう。
住宅が変える健康な社会と日本の未来
これまで 5 回にわたり、住宅と健康の関係についてご紹介してきました。ここまでで明らかになったのは、 住宅の断熱性能向上が人々の健康を守り、急速に深刻化する医療・介護問題への効果的な解決手段となりう るということです。 日本の住宅においては、まだ断熱性能が低い住宅が多いという現状があります。健康な社会を目指すために も、まずは住宅業界の意識を変え、正しい知識を持って、お客様に家づくりの提案をしていくことが重要となるでしょう。
資料引用:慶應義塾大学名誉教授
一般財団法人住宅・建築SDGs推進センター 理事長 伊香賀俊治先生
「建築と医学の視点から学ぶ健康住宅シンポジウム in 福井(2025.5.27)」
企画・編集:(一社)日本人の健康をつくる住宅断熱リフォーム推進協議会