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【特別対談】まちに救われた恩返しを、次世代へ。江川さんが「本音」で編み直す、地域の絆と防災のカタチ

地域のつながりが希薄になりつつあると言われる時代。
その中で、「人と人が支え合う関係性」を、もう一度地域に取り戻そうと動き続けている人がいます。

坂井市でコミュニティ拠点「Raki」を運営し、4,500人を動員した「さかい防災フェスティバル」を手がけた江川さん。
その活動の原点には、“まちに救われた”という一つの実体験がありました。
なぜ、江川さんは、ここまで地域に向き合い続けるのか。
その背景にある想いと、活動の本質に迫ります。

 

 

▼コミュニティカフェRakiさまインスタグラムはこちらから

https://www.instagram.com/rakicafecommunity/

▼さかい防災フェスティバルはこちらから

https://sakaibousaifes.com/fukui-airport2025/

 

 

コミュニティカフェ Raki
江川 真美さま

有限会社カワバタ建設 イノベーション事業部 部長
藤内 優

 

まちが差し伸べてくれた「手」が、活動の原点

藤内:江川さん、本日はよろしくお願いします。

江川さん:よろしくお願いします!

藤内:坂井市で開催された「さかい防災フェスティバル」、本当に素晴らしい盛り上がりでしたね。目標3,000人に対して、実際には4,500人もの方が来場されたと伺いました。江川さんをそこまで突き動かす、地域への情熱の源泉はどこにあるのでしょうか?

江川さん:よく「どこにそんなバイタリティがあるの?」と聞かれるのですが、答えはとてもシンプルで、「坂井市が大好きだから」という一言に尽きるんです。

実は数年前、私自身の人生において、自分一人ではどうにもならないような大きな壁にぶつかり、立ち止まってしまった時期がありました。

藤内:人生の大きな転換期、いわば試練の時だったのですね。

江川さん:はい。その時、当時小学生だった娘が通う学校の先生が、私の変化にいち早く気づき、「大丈夫ですか?」とそっと声をかけてくれたんです。そこから校長先生、そして坂井市役所の相談窓口へと、まるで見守られるようにバトンが繋がっていきました。

藤内:学校から行政へと、江川さんを支えるネットワークが即座に動き出したのですね。

江川さん:そうなんです。窓口の相談員さんは、私の話を丁寧に聞き、「第三者を交えて客観的に話し合いましょう」と背中を押してくれました。

専門的な視点を持つプロが間に入ってくれたことで、私は再び前を向いて歩き出す勇気を持てた。「絶望の中にいた私を、このまちの仕組みと人の温かさが救ってくれた」。その強烈な感謝の念が、今の活動の「ガソリン」になっています(笑)

藤内:まちの「助け合いの仕組み」を身をもって体感されたことが、「このまちのために何かをしたい」という情熱に直結したのですね。

江川さん:まさにそうです。自分を救ってくれた坂井市に対し、私にできることで恩返しをしたい。そう思って飛び込んだ「坂井市まちづくりカレッジ」での出会いが、すべての始まりでした。

 

 

防災を「楽しみ」に変え、コミュニティを繋ぎ直す

藤内:その恩返しの形が、なぜ「防災」だったのでしょうか?

江川さん:坂井市まちづくりカレッジという行政職員と、地域づくりに興味のある住民が一緒になって地域の課題解決を考えるワークショップに参加して、出会ったメンバーの中に、防災関連の方や行政の管理職の方がいらっしゃったんです。


(坂井市まちづくりカレッジ参加の様子)

防災という言葉はとても「固い」イメージがあり、従来の避難訓練ではなかなか人が集まりません。
でも、被災体験を持つ方々が共通して語るのは、備蓄品などの「物」以上に、「日頃からの顔の見える関係が、いかに大事だったか」ということでした。

 

 


(防災DAYキャンプの様子)

 

藤内:日常の繋がりこそが、いざという時の究極の備えになる、ということですか?

江川さん:その通りです。だからこそ、防災を入り口にして、希薄になった地域のコミュニティを楽しく、フランクに強化したいと考えました。
訓練ではなく、親子でレジャー感覚で楽しめる「フェス」という形なら、多世代が笑顔で集まれる。「何かあった時も、いつもの時も、助け合える関係性」を創ること。それが、私が描いたアクションプランでした。

藤内:最初は小さな規模からのスタートだったそうですね。

江川さん:はい。まずは小学校の体育館をお借りして、100組限定の「デイ防災キャンプ」から始めました。炊き出しのカレーを食べたり、高校生ボランティアと一緒に防災スリッパを作ったり。これが想像以上の大反響で、アンケートでも「また参加したい」という回答が100%だったんです。


(防災DAYキャンプの様子)

 

藤内:その成功体験が、4,500人を集める大規模な「さかい防災フェスティバル」へと一気に加速させていったのですね。

江川さん:当日は、始まる10分前から行列がドーンとできて、受付を急遽増設するほどの大興奮でした。企業や団体など約40ものブースが並び、まち全体が「防災」というテーマで一つになる感覚を味わうことができました。

 


(防災DAYキャンプの様子)

 

 

▼坂井市まちづくりカレッジとは?

 

 

 

リーダーシップの変容 完璧主義を捨て「頼る力」を育む

藤内:江川さんの周りには、いつも多くの仲間が集まっていますよね。大規模なイベントを動かす上で、大切にしている「流儀」はありますか?

江川さん:私が心に刻んでいるのは、「絶対に当たり前だと思わないこと」です。協力してくれる企業さんや学生ボランティアさん一人ひとりに対して、「おかげさま」という感謝と尊敬の気持ちを忘れないようにしています。

また、チームの仲間の顔が少しでも曇っていたら、1対1で早めに心境を聞くなど、早期解決を心がけています。

 

藤内:最初からそうした「寄り添うリーダーシップ」をお持ちだったのですか?

江川さん:実は、以前の私は全く逆でした。20代の頃は極端な完璧主義者で、「良い人」「完璧な長女」と見られないと嫌だという思いが強かったんです。だから、本音を隠して「偽善のニコニコ笑顔」を振りまくことが癖になっていました。

でも、それは嫌われることへの怖さから自分を守るための防御反応で、結局は自分に嘘をつき続ける歪みを生んでいたんです。

藤内:その「仮面」を脱ぐことになった、決定的なきっかけは何だったのでしょう。

江川さん:40歳を目前にした時、「エキセントリックカレッジふくい」という学びの場で、自分の人生を深く見つめ直す機会がありました。


(エキセントリックカレッジふくいの登壇時の様子)

 

そこで自分の過去を振り返るグラフを書いた際、周囲から「家族の話をする時、全然目が笑っていないよ」と指摘されたんです。

藤内:目が笑っていない、ですか。

江川さん:はい。ずっと「良い子」を演じてきた私の笑顔は、実は感情に蓋をするためのものでした。その事実に気づいた時、堰を切ったように涙が溢れ出し、3日間ほど泣き止まないほど激しいデトックスを経験しました。

そこで初めて、「自分は完璧でなくていい、未熟なまま人に甘えてもいいんだ」と自分を許すことができたんです。

藤内:それが、江川さんの語る「二度目の成人式(リスタート)」なのですね。

江川さん:そうです。40歳を機に、嫌なことは嫌だと言うし、苦手なことは「助けて」と言う本音の生き方に変えました。

事務作業やタスク管理が全くできない自分を隠さずに仲間に頼る。そうやって弱さを見せられるようになったら、周りからの助けが驚くほど「愛」に変わっていきました。私が未熟だからこそ、みんなが「助けてあげよう」と結束してくれる。今の「ワンチーム」があるのは、私が完璧主義を捨てたおかげだと思っています。

 

▼エキセントリックカレッジとは?

 

 

坂井市という「誇り」と共に歩む

藤内:江川さんのお話を伺っていると、個人的な感謝から始まったアクションが、今ではまち全体の未来を照らす大きな希望になっていると感じます。

江川さん:坂井市は、小麦粉がなければ隣に借りに行くような「互助」の精神が今も息づいている、本当に温かいまちです。このまちが大好きだからこそ、私はここで、みんなと一緒に感情を共有し続けたいです。

藤内:江川さんのようなリーダーがいることは、この地域にとっての誇りです。

江川さん:ありがとうございます。これからも「一人では何もできない」という謙虚さを忘れず、未熟な私を支えてくれる仲間たちと一緒に、坂井市をより温かくて、強い場所へとアップデートしていきたいです。

 

 

 

 

 

江川さんの情熱の根底には、自身が人生の大きな転機に直面した際、まちの仕組みと人の温かさに救われたという深い実体験がありました。
40歳で迎えた「二度目の成人式」を経て、完璧主義を脱ぎ捨てて本音で生きることを選んだ彼女のリーダーシップは、周囲への「感謝と尊敬」によって強固な信頼関係を築いています。

江川さんの提唱する「顔の見える関係づくりとしての防災」は、単なる災害対策を超え、地域の孤独を埋め、多様性を認め合う、新しい社会のセーフティネットの形を示しています。
一人の女性の「恩返し」から始まった活動は、今、坂井市全体を包み込む大きな愛のネットワークへと進化し続けています。

 

 

また、今回のインタビューを通して強く感じたのは、福井には「何かに挑戦したい」と考える人の背中を押す土壌があるということです。
坂井市まちづくりカレッジやエキセントリックカレッジふくいをはじめ、福井には多種多様なチャレンジを支援する仕組みがあります。地域の課題解決や新しい活動に対して、行政・地域・民間が連携しながら挑戦を後押ししている姿勢が印象的でした。かつては「新しいものには慎重」という県民性のイメージもありましたが、今の福井は、新しい挑戦を受け入れ、実践できる舞台が整っています。空間をデザインする私たちもまた、暮らしや地域に新しい価値を生み出そうとする人たちを応援できる存在でありたいと思います。